【ツリーシェルター通信 No.1 2024/07/06】『ツリーシェルターの歴史 1 』

■イギリスで生まれたツリーシェルター

 ツリーシェルターの歴史は1979年、イギリスのAlice Holt Loddge (アリスホルトロッジ) 林業試験場で始まりました。研究員のGraham Tuley (グラハム・チューレイ) が新たに植栽された樹木の成長率を高める目的で、既成のプラスチックのメッシュガードにポリエチレン布を巻きつけてみたのです。この発想、畑で植えたての苗にプラスチックコップをかぶせて保護しているのを見たことから来ているそう。当初、周囲からは否定的な反応ばかりだったそうですが(暑さで枯れる、蒸れて枯れる等)、1979年には試験的に180本実施し、良好な生育を確認 、翌年には1800本、1984年までには100万本以上が商品として製造・販売されるまでになりました。

どうしてツリーシェルターがイギリスでこれ程の成功を納めたのでしょうか?

それは、ツリーシェルターが実現する活着率向上効果・成長促進効果が大きな要因です。広葉樹の場合、2~3倍の成長率を実現する能力がツリーシェルターには備わっていました。しかし、時代の要請にマッチしたこともツリーシェルターの成功の理由となっています。つまり 、公共の要望により、1980年代初め、広葉樹への関心が高まった。それまでは、シトカトウヒ・ロッジポールマツのような外来の針葉樹が中心だったが、広葉樹植栽に国から予算がつくとともに、密植を見直し低密度植栽が奨励された。低密度で植栽する為、確実に育てる必要がでてきたと言うわけです。イギリスでは、時代の要請により、森林管理の方法が木材生産目的から公共的なもの(公益的なもの)へと変化し、それと共に育林の方法も変化しました。新しい育林方法にマッチした技術、それがツリーシェルターなのです。

因みに、イギリスでは、ツリーシェルターは以下の点で評価されています。

 ●植栽木の生存率と成長率を高める
 ●動物の食害から樹木を護る
 ●除草剤散布スピードと効果を高める
 ●植栽木が見つけやすく、手入れのために直線状に植える必要がなくなる

チューレイの発見は、イギリス国内に留まらず世界各国で評価を受けノーベル賞に値する発見であると賞賛を受けています。

イギリス アリスホルトロッジ林業試験場にて 1995年8月25日 赤井龍男先生撮影

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